つなかん。トップ絵コレクション(ねこカップル以外)

つなかんというのは2000年から続く化石サイトなのです。内容はいまとかわらない、テキストとイラストとお芝居とgdgdなのです。

これはあくまなのです。
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あくまだって樹海で癒されるのです。
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アキバ系だっているのです。
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おげひんなこともありました。
おげひんなこともありました。
これもおげひんな時代ですね
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全部アナログ手書き!が楽しい時代もありました
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おげひんですね、何も更新できなかった頃だけど今よりしてましたよ暇だったから
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貝印ですね、アンテナとかなつかしいです、はてな使ってました
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混迷を極めていますね、そう、ドラクエ実況ブログとかやってました、パスワード忘れたので削除できません、探せば出てくると思います。
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このへん投げやりですね
このへん投げやりですね

他にもでてきたら追加します。

つなかん。トップ絵コレクション(ねこ?カップル)

実は「つなかん」というのは、なんと2000年から続く化石サイトなのです。それくらいからtsunakan.infoを運用しているのです。今回ご紹介するのは、サイト常連だった皆様からもご好評だったねこ?カップルが飾ったトップ絵です。

 

おそらくねこ?カップルシリーズの最初
おそらくねこ?カップルシリーズの最初
ねこ?カップルシリーズ2 深い仲になって…
ねこ?カップルシリーズ2
深い仲になって…
ねこ?カップルシリーズ3 ついにこんな日が
ねこ?カップルシリーズ3 ついにこんな日が
ねこ?カップルシリーズ5 私もねこも休む
ねこ?カップルシリーズ4
私もねこも休む
ねこ?カップルシリーズ5 あらあら旦那様…
ねこ?カップルシリーズ5
あらあら旦那様…
ねこ?カップルシリーズ6 修羅場です
ねこ?カップルシリーズ6
修羅場です
ねこ?カップルシリーズの悲しい結末
ねこ?カップルシリーズの悲しい結末

風姿花伝の変声期の描写から思いついた萌え

<発端の思いつき>

少年少女合唱団でボーイソプラノが見事な男の子(A男)とあんまり努力してない女の子(B子)がいて、ある日B子に初潮が訪れイヤダイヤダ男になりたいと言いながらC先生に甘える姿に軽蔑してA男は稽古に邁進していたけど、変声期が訪れて歌えなくなり退団し、B子がソロパートを任されたと聞いて自殺を図る話が読みたい

↑これが思いの外長くなった。

★登場人物★
A男…主人公っぽい
B子…主人公と同じ少年少女合唱団に入っていた
C先生…A男とB子の合唱団の指導者
D美…A男のかなり年上の妻。
E代…B子の就職先の先輩(年下)。のちにB子の恋人で仕事のパートナーとなる。
F太…A男とD美の息子。
G子…A男とD美の娘でF太の妹。
H彦…成長したA男が指導する少年少女合唱団の生徒。

<第1部 A男の話>
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少年少女合唱団でボーイソプラノが見事な男の子(A男)とあんまり努力してない女の子(B子)がいて、ある日B子に初潮が訪れイヤダイヤダ男になりたいと言いながらC先生に甘える姿に軽蔑してA男は稽古に邁進していたけど、変声期が訪れて歌えなくなり退団し、B子がソロパートを任されたと聞く。
それは合唱全体のバランスを考慮したことだったけどA男はC先生がB子に誑かされたと思い込み日に日に男になっていく自分を憎んで首を切る。一命を取り留めたものの声はますます出にくくなるし喉が弱くなるし傷痕が残ってしまう。高校生になるまで一切人と口をきかない。

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B子は自責するもののそれまでの態度を一変し努めに努め見事に歌う。歌うことをやめようとしたけれど周囲に相談し歌い続ける。先生も深く悔いるけれどそれがA男の限界だったと言い聞かせる。結果稽古は洗練されC先生率いる少年少女合唱団は全国上位に食い込むようになる。

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高校生になり、A男は遠く離れた全寮制学園に入るがそこでは1年生は必ず応援団をやらねばならず、血を吐きながら三三七拍子をうたう。血を吐いても誰も深刻にならず声が掠れても手加減をしない旧式の体制でボロボロになるけれど、それは彼がソプラノを諦める十分な理由になった

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少年時代に培った生真面目な練習態度で先輩に気に入られ、学園のトップグループに入り煙草を吸い女を誑かし後輩を殴る。立派にクソ筋肉となったA男は受験を控えたある日、テレビでかつて合唱団で一緒だったB子が名高いミュージカルの主役に抜擢されたことを知る。

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もうすっかり諦めきったつもりでいたものの胸に湧き上がる不快感に耐えられず彼は件のミュージカルを実際に見て、それが女であることへの甘えではなかったと気がつく。たとえ自分が女だとしても彼女のようになれなかっただろうと実感し、浴びるように酒を飲み受験に失敗する。
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2年の浪人生活中、入り浸っていたゲームセンターで年の離れたD美と知り合い妊娠させて結婚を決める。水道工事の営業として就職し身重の女を連れて実家に帰ると市民交響楽団でチェロを弾く兄にかつての神童が悪徳まがいの営業と残念そうに言われるが不思議と腹が立たない。

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A男の兄はもとヴァイオリン奏者を希望していてヴァイオリンよりチェロの方が人数少なそうだとチェロに変えて音大にあがる才能もなく働きながら日曜に市民楽団で続けていて、己の才覚のなさ努力不足を知りなお続けている兄の胸中を慮ることができる程度に彼は成長していた。

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結婚して女のマンションに住んでからも勤勉だけが取り柄なのだと知っていて、悪徳まがいの仕事だけど真面目に続け成績は中の上、妻と子どもを養える収入を得て、もう少し世間に認められる仕事がしたいと思い社会人大学に入り子どもが小学校に上がる頃に転職する


 

<第2部 B子の話>
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一方ミュージカル主役に抜擢されたB子はその後いくつかの舞台を経て大手事務所に所属を決め、虚栄心を満たしつつもいつまでも努力を続けなければいけない世界に身を置いていることを悔やむ日々が続く。もともと努力は好きではなかった。自分には才能もないと思っていた。

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初潮が始まった頃から月経困難がひどく、憂鬱に陥りやすいのも難点だった。いつでも辞めたいと思っているが、そうすると喉を切ったというA男の血姿が現れて奪ったものを安易に捨てるなと言う。かつてはそれで奮起していたが成人してから追い詰められるようになっていた。

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数回ドラマにも脇役で出たが外科手術でもしないと太刀打ちできない美少女に囲まれ、なおかつ彼女らが底知れぬ情熱と努力を傾けていることを知ると、そこが自分にとって永続的にいられる場所ではないと実感する。歌に専念しようと音大を受験し合格するが、周囲より年齢が上であることに引け目を覚える。それでも友人を作り、歌唱力をあげてゆく。

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在学中もいくつか舞台に出て評価もされるが休まることがない。男に媚びていると思われるのも血姿の少年を思い起こされて嫌で、自分より明らかに劣っている男としか関係を持つことができない。指摘を受け自分でも少女の頃の出来事に囚われすぎていると思うが逃れられない

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就職時期を前に音楽を続けるか迷って帰省した折A男がしっかり者の妻と幼い子をもって音楽と全く関係のない安定した生活をしている、声に出して笑いもすると聞く。この10年以上は何だったのかと安心と憎しみが湧いてくる。会って話せば克服できると思うが機会を逸する

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結局上を見ればキリのない音楽から足を洗う決意をし一般事務職で就職をするが、どこか周囲から浮いてしまうし、これまでの経緯から男を立てるということも出来ない。高卒入社の年下の先輩事務員E代が見かねて親切にするとB子はその行為を過剰に受け取り持て余していた熱を全て傾けるように恋する。

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男性と付き合うときのように男に媚びていると思われる心配もなければ血姿の少年に呪われることもない選択だった。くわえてこれまで付き合った格下の男と違って先輩は容姿はさほどでないが仕事はできて尊敬に値する人間だった。E代は流されるままB子と付き合い一緒に暮らし始める

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E代は、容姿も良くない資産もない頭もとりたててよくもないから早く就職して結婚しようと思っていたが、仕事の忙しさと難しくはないが正確さを求められるルーチンワークが性に合っていたのか仕事ばかりで浮いたこともなく恋することもなかったので、年上の華やかな後輩であるB子の求愛を歪に感じながら断れなかった

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E代と暮らし始めて間もなくB子は大学時代の友人に頼まれて結婚式で歌い、合唱団に入った頃以来、何にも束縛されず歌うことは楽しいと感じる。事務職を辞めてコンビニでバイトをしながら再び歌の勉強を始める。E代は田舎の親の勧める結婚を断り、恋人の変化を喜ぶ。


 

★登場人物復習★
A男…主人公っぽい
B子…主人公と同じ少年少女合唱団に入っていた
C先生…A男とB子の合唱団の指導者
D美…A男のかなり年上の妻。
E代…B子の就職先の先輩(年下)。のちにB子の恋人で仕事のパートナーとなる。
F太…A男とD美の息子。
G子…A男とD美の娘でF太の妹。
H彦…成長したA男が指導する少年少女合唱団の生徒。

<第3部 A男一家の離散>
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地方に機械部品製造会社の営業として経験を積んで課長職になったかつての神童は上の子どものF太が中学生になる頃地元に家を建てる。F太は音楽に興味がなく親戚にかつて父親がソプラノを担当していたと聞かされても笑い飛ばす。サッカー選手になりたいが無理だと知っている。

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下の子どもは女の子でG子といい、ずっと幼い頃から父親に媚びるような目線を向けるのでA男は愛おしいが少し苦手で、上の子のように直情的に愛することが難しい。妻のD美は彼のトラウマを知っているのでこれを機会に克服せよと言うが彼は不器用に娘を壊れやすく汚れやすいものとして扱う

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G子も敏感に父親の歪さを受け取り余計父親に固執する。若干情緒不安定気味に育ち父親に振り向いて貰うため勉強も運動も人一倍努力する。兄は妹を可哀想に思ってゲームに誘ったり女友達を連れてきて遊ばせるが妹は満たされない。父に代われない兄の虚しさは父への怒りになる。

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F太は次第に荒れてゆき父の昔の自殺騒ぎを持ち出し揶揄する。父親は応援団仕込みの恫喝でしか息子に太刀打ちできず妻を困らせる。D美はしばらく息子と娘を連れて別居をすることを決め自分の実家がある離島に引っ越す。

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妻子に見放されたのは今も昔も自分勝手だからだと周囲に噂され、彼自身そうだと思い自暴自棄な生活を送っていると、どこで耳に入れたのか、かつての少年少女合唱団のC先生から手紙が届き、自分も歳をとった、指導に歌唱力は必要ないから合唱団の指導をしてみないかという

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縋る人をなくした彼にかつて憧れた先生の手紙は涙が出るほどで、彼はC先生に会うが、本人の言う通り随分老人になっていた。C先生は彼を見て、きみの才能を伸ばす選択もフォローも出来なかったことを悔いていた、きみには音楽が歌が必要なのだと泣きA男もかつての浅はかさを悔いる

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それから仕事を終えて家に帰ると音楽の勉強を再開した。集中力は落ち耳も衰えているが持ち前の勤勉さで知識は一通り叩き込んだ。半年後にはC先生に同行し少年少女の声を学び始める。落ち着きを取り戻したと聞いたD美が娘を連れてたまに訪れるが息子は心を閉ざしたままだ。

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毎日顔を合わせていた頃よりも彼は娘を愛しやすく思ったが、当のG子は父親の関心が合唱団に向いているのを見ると自分も歌いたいと言う。しかし父親以外に学びたいと言って母親を困らせる。D美は娘に父親を傷つけたい思いがあるのを気づいているが娘の望むように教室を探す。

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娘は都会で勉強したい、田舎は父親程度が指導できるようなところだと主張し、都会で一通り遊び倒した母はそれが幻想だと知っているが、身をもって学ばないと意味がないと思い、実家に長男だけ残し住まいをうつし働きながら都会で教室を探すと一つの教室を見つける。

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それはB子がやっている教室で、音大の仲間で自宅レッスンから始めて、スタジオを3つ借りて講師たちに謝礼をきちんと出せるくらいになっていた。E代との恋愛関係は終わっていたが良いビジネスパートナーとなりE代の収支管理で健全な運営ができていた。

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B子はG子を見てA男によく似ていると思うが娘だとは思わない。G子は美しいソプラノを歌い講師の間でもレッスンのランクを上げるか議論されるが、B子は少女が歌を愛してるのではなさそうで勧められない。少女は褒められて気分が良いが電話報告しても父も兄も喜ばず甲斐がない
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F太は離島で母方の祖父母と落ち着いた暮らしをし、それが性に合っているのだが、妹を案じて教室のことを調べてゆくうち、その経営者がかつて父を追い詰めた少女だったと知る。因縁めいたものを感じるが妹に明かせば妹は更に躍起になりそうで言えず、一緒に離島で暮らそうと誘うが断られる。

<第4部 G子の話1>
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F太は案じて母にだけ気がついたことを明かす。D美はB子をお茶に誘い確認する。B子の方でも察していたので正直に明かす。D美はB子を気持ちのいい女性と思ったしB子はD美を快く感じた。次第に二人は深い友情を感じ合うようになるが二人で話すのはG子とA男のことだった。
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G子は母が先生と仲良くなったことに気がつき父だけでなく母も歌に奪われたと感じる。D美はG子の歌が素敵な友人に巡り会わせてくれたとフォローするがG子は納得いかない。遅い初潮を迎えたとき、父が自分を避けたのは自分の甘えた態度が原因であると勘付いており、やはり自分は父が忌み嫌う女という甘えた生き物なのだと絶望する

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初潮のことを母に明かせば自分が女であることが決定づけられてしまいそうで隠そうとするが、不定期に来る出血に対応しきれず暫くして知られてしまう。D美は隠そうとした娘の胸の内を思い、G子のためにしてきた全てが娘を苦しませるのだろうかと悩み、B子に相談をする。

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B子はもう遠い昔に自分がかかり解く術を知らないままにきた呪いが、今若く将来性のある少女にうつってしまったと思い、あの帰省の折に無理にでもA男に会って呪いを解くべきだったと悔やむ。今は教室運営に専念するE代に泣きつくが、少女には泣きつく胸がないと思いまた泣く

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G子は歌をサボりがちになるが事前に料金を払ってたので出たコンクールで上位になる。高名な指導者の団体へ誘われ自尊心をくすぐられ、また父の生徒がそこに選ばれなかったことに優越するが、父から祝われ自分がかなえられなかった歌の道を頑張れと言われ、父にようやく愛されたと思う

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父の分まで歌いたいと宣言し教室をうつる意向を話すと、B子はG子の意思を尊重しようと思っていたので、「ならば頑張れあなたは私と違って容姿もいいし努力家だから、容姿もひとつの才能だから、今回選ばれたくとも選ばれなかった他の人やお父さんや私のためにも無駄にしないで」と伝えて、G子はそれらに自分を讃える言葉ばかり見つけ満足していたが、夜にB子は、いずれ壁に直面した時に自分の言葉が呪いとしてG子に発動し、「選ばれたくとも選ばれなかった子のために」辞めるに辞められない状況を生むのではと気がつく。E代に相談すると、ならば教室をプロダクションにし生徒を守れるくらい大きくしようと提案される

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教室を大きく広げ、多角経営で大手とも渡り合える名前となるとG子はそれらが自分のためなのだと知り教室をうつらないまま高名な指導者の教えを享けることにする。

<第5部 G子の話2>
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同じ頃にA男は伝統ある合唱団を弱体化させた臆病者と批判されていた。彼は変声期の少年を構成から外さなかった。

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外されなかった少年たちはそれでも自分の声が出なくなってしまうことにもどかしさを覚えて自発的に辞めることが多かった。不安定な声はそのまま彼らの不安定さでしかない。A男はただ変声期の少年たちとどう接したらいいのかわからなかった。臆病者との誹りは真実だった

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娘を指導したのがかつてのあのB子だといくら何でも知っていたしC先生ともよくその話をした。A男は自らの行動がB子を宿命づけたような気で責任を覚えるが、C先生はそれらが宿命だったなら最初から全部宿命だったと言い、こうして再び顔をあわせることが出来て良かったと言う

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入退院をしC先生は亡くなるが身内よりも誰よりもA男は献身的に先生の世話をしていた。息子や娘や実の親にするよりも深い敬愛を傾けていた。彼はホモセクシャルで先生が好きだったから自殺を図ったのだと当時もあった噂がまた広がっていたがあまり気に留めなかった

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その先生の葬式でA男とB子は数十年ぶりに顔をあわせる。かつての美少年は人の良さそうなオヤジになり、ぱっとしなかった少女は年齢を感じさせない女になっている。通り一遍の挨拶を交わし昔の話を始めて互いの誤解を知り、指導者として良いライバルになろうと誓い合う。

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G子は高名な先生に指導を受け虚栄心と自尊心を満たすが、それだけで満足しようとする自分と、どこまでも貪欲に学ぼうとする周囲の差に戸惑う。チャンスを手に入れるために媚びることを厭わない少女たちを知り己がこだわってきた価値観が崩壊していく。G子はすっかり嫌になる

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その頃離島の兄が観光に来ていた風俗の娘と深い仲になり妊娠させて結婚することになったと知らせを受ける。島ではよくある話で、身よりらしい身寄りのない女性は島に嫁に来てくれると言うし、F太も精密機器工場で働いていて母を含めて島の人々には受け入れられていた

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父もそれに関するだらしなさや結婚の経緯はまるで自分と同じだと笑うがG子は笑えない。兄は酷くだらしのない男だと思い、そのだらしなさこそ生きやすさなのだとも思う。業界の人らしき男性に誘われて一夜過ごしてみるが自分が汚れたような気がするだけだった。

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G子は意に反してしかしその潔癖さが動力となるのか、世間に受け入れられてゆく。指導者対決は概ねB子の勝ちっぱなしで面白いものではなかったが、A男もB子も互いのステージの違いをよく理解しあまり本気にしてはいなかった。ただお互いの非を許しあうための詭弁だった


 

★登場人物復習★
A男…主人公っぽい
B子…主人公と同じ少年少女合唱団に入っていた
C先生…A男とB子の合唱団の指導者
D美…A男のかなり年上の妻。
E代…B子の就職先の先輩(年下)。のちにB子の恋人で仕事のパートナーとなる。
F太…A男とD美の息子。
G子…A男とD美の娘でF太の妹。
H彦…成長したA男が指導する少年少女合唱団の生徒。

<第6部 H彦の話>
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H彦というその少年は最初は目立たなかった。顔立ちが整ってはいるが決して賢くはない両親が、子どもに時間を取られたくなくて安価に長時間預かってくれるという理由で合唱団に入れたのだった。そうした家で育った子によくあるようにH彦は年にも容姿にも合わないくらい荒れていた。

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弱体化した合唱団はただの子守り場所だったのでA男はH彦を他の子と同じように受け入れた。しかし歌うことが彼には合っていたのか、1年もすると隣町の合唱団が引き抜こうとするほどの美しい声になった。H彦の両親は息子が金になると踏んでテレビのオーディションに応募した。

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H彦はオーディションを合唱団の練習があるからと蹴った。A男は自分の娘にも息子にも十分してやれなかったことをこの少年にせねばならないと強く思い、かつてないほどに熱を込めて指導し始めた。A男はかつての自分がH彦のように歌を渇望していたことを思い出した。

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A男にとって歌うことは自分がその存在を認めれるための方法だった。G子にとってB子にとってそうであったように。しかしA男は、それ以上に歌を愛していた。美しい歌を完成させる一員になることを誇らしくおもっていた。だからこそ醜い声しか出なくなったとき、歌に参加できなくなったとき、居場所を失った

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H彦にはそんな思いをさせてはならないと、彼はこれから少年にやってくるだろう変声期について伝えた。H彦はあまり頭が良い方ではなかったためか今ひとつ自分のことだと思わないようだった。次第にH彦は家に帰らずA男が一人で暮らす一軒家に入り浸るようになる

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A男は兄に犯罪まがいだと言われたが、H彦が家に帰ればろくな教育どころかオーディションを受けろと歌いたくない歌を歌わされると知っていた。A男はH彦が歌いたくない歌を歌うことも無理矢理にプロにしようとすることも止める責任が自分にはあると思っていた。

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H彦の両親の方でも息子が家にいなければ食費が減るのでそれはそれで良いということで取り沙汰されず、H彦はほぼ四六時中A男に歌の指導を受けることになった。H彦は自分にはそれしかないと言うように歌い、彼の指導を素直に受け止めた。A男は意志を確認しH彦をコンクールに応募した
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コンクールの一週間前にH彦が風邪を引いたと言うので喉を見ると、風邪ではなかった。ついにその時がきたのだと彼は知り、変声期と伝えるかコンクールを楽しみにしている少年に水をさすべきではないのか悩んだが伝えた。もう高音は出なくなる。無理に出せば歌えなくなる。

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少年がそれをどういう動揺で受け止めたのかわからなかったが、H彦はそれでも記念になるからコンクールには出ると言い、出場した。歌の途中で声が出なくなり勿論入賞しなかった。彼も指導を非難された。それでも少年は、もう高音は歌えなくなるかもしれないが良かったと言う
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H彦はその日の別れ際、先生の子どもになりたかった、みんななりたい家の子になれたら良いのに、とぽつりと言って家に帰った。それから1ヶ月後にH彦の両親は息子への暴行で逮捕され少年は死んでしまった。歌がうまいとみんなが言うから歌わせたらかすれた声で殆ど歌えないから、ふざけてると思ったのだと言う

<第7部 A男の話>
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G子はそこそこに売れて音楽雑誌のライターと結婚して離婚し、D美と自分が産んだ娘と3人で帰ってきたが、H彦を失って打ちひしがれる父を慰めようと思っていたのに、自分ではなく他所の子どもを追い求めた父への恨みがましさが湧き上がり、何で手放したのか彼の死は父の責任だと責める

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言葉は溢れ出したら止まらず自分が歌いたくないのに歌ったのも、つまらない男と結婚してしまったのもこうして子どもが生まれたのも全部父のせいだと言い、何で親を選べなかったのか、私は父を追い詰めたかもしれないB子の娘になりたいと言い放つと家を出て行く。

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D美はしばらく彼のそばにいたが、もとより年がだいぶ上だったのと誉められない生活態度で体を悪くし倒れる。A男は深い憂鬱に至り妻の介護も十分に出来ないのでF太がD美を迎えに来て離島に連れて行く。その島でD美は四人の孫に見守られながら死ぬ。G子は都会で歌の指導をしつつ子を育てる。

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妻の葬式に出た後A男は船で家に戻りながら、ついに家族に家族らしいことを何も出来なかったあの家に帰ることには何も意味がないのではないかと考える。帰ったらその家を売って自分は施設にでも入ろうと考え、家に帰り、その夜煙草を吸って、それが失火し火災となる。

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延焼前に鎮火したが彼には逃げようとした形跡がなく自殺ではとも言われるが定かでない。もっとも一酸化炭素を吸い込み弱った喉では助けを呼ぶことも出来なかっただろう。娘はその報せをうけいよいよ自分には帰る場所がなくなったと知る。離島も自分の居場所ではなかった。

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G子は自分の娘を育てながら、B子とそのパートナーであるE代の世話をし、女だけの家で暮している。やがてB子もE代もいなくなる時にこの大きくなりすぎたプロダクションを維持するために自分にもパートナーが必要だと思いながら、でもそれは配偶者ではないと思っている

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おしまい
(2015/10)

彼岸花に吸い込まれて死ぬというかっこいいシチュエーションを思いついた

彼岸花って球根植物なんだへー。え?じゃあどうやって増えるの?からの、受粉なしに増えて全草有毒って潔癖の女子みたいだなっていう。なんかそういう潔癖の呪いをかけたくなって思い浮かんだ。

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彼岸花は日本海の無人島にだけ生えている種で、酔狂なお金持ちが庭に植えるの。花弁からは微弱な酸性ガスが出ており、鳥や虫を寄せ付けない。箱入りで蝶よ花よと育てられたお嬢様は殊にその花を愛して大切にしていた。気高い花なのだと言って丁寧に扱った。

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お祖母様からその花を持ち込んだ曽祖父の話を聞き、お前もこの花のように気高くいればいずれ見初められて良い家へ嫁に入るだろうと聞かされる。お嬢様は同じ年頃の女の子と交わらず大人の中に入ることを好んだ。気高く美しくあろうと務め、卑近な学友など求めなかった

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お金持ちの家には政財界の重鎮や若き官僚の卵、実業家が出入りしていた。お嬢様はみだりに人前に出ることをよしとせず、招かれた時だけ顔を出した。そんな風にひとり、または身内の中だけで過ごすことが多かったので、お嬢様は随分夢想家に育った。望んだ通り気高いのだがあんまりに浮いていた。

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良家の子女というのは夢見がちすぎても良くはなく、心配した父親は社交の場に娘を出す機会を増やした。お祖母様は早くに虫につかれたら花も咲くまいと反対したが、進歩的な考えの父は聞く耳を持たなかった。お嬢様は年上の高貴なお嬢さんたちのお茶会に混ざるようになった。

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お姉様方は薔薇で棘がある。棘はあるけど花弁に虫が寄る。お姉様方はその虫は選ばれた虫なのだとして、選ばれた虫だけに寄らせるのだとして誇らしげだが、お嬢様からしてみれば下賤だった。お姉様方は案外簡単に虫をつけていた。お嬢様は鳥も虫もよせつけないあの彼岸花のような自分を誇った。

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ところで彼岸花は東アジアに広く分布し強く育てやすい植物である。それがなぜこの種は日本海の、あの小さな島にしか咲かないのか。またなぜその島で絶えることがないのか。無論その島以外では、環境に配慮しなければ育たないからである。通常の花が出さないガスを生成するようになったのも自己防衛だ。

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その島は数百年前活動を終えるまで長い間火山島だった。が、長い活動期間に人が寄り付かなかったわけではない。歴史の中で人が住むこともあった。最初にそうして人の手または鳥によって運ばれた球根は、現在広く分布する種と大きく違わなかっただろう。毒はあってもガスを出しはしなかったと思われる。

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恐らくは否応なしに移住した人の手によって島に渡った花は、時折噴き出す溶岩、灰、熱風、岩石、硫黄に耐え、順化していったのだ。そして外敵から身を守るために火山を模して、ガスを吐くようになったのではないか。ーーー曽祖父に付き添って島へ渡った植物学者が文献にそう残している。

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*毒が球根以外殆ど残っていないほうがそれっぽい。土地が脆いので地中に敵が少なかったが飛来する敵から身を守る必要があったと。だから普通の環境では茎が弱点となってしまう。

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薔薇のようなお姉様方と親しくするうち、薔薇ではないものも混ざってくる。ダリアと呼びたい女は賤しい生まれにも関わらず集まりに顔を出す。彼女は猛勉強と厚化粧で上流の顔をし男たちを誑かすのだった。上流のお姉様方はそれを面白がりまた頼もしくも感じ何かと彼女を立てるのだ。

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お嬢様もダリアを見下しながら節度ある社交婦人として3回に1回はお茶をした。その1回が活動家の集まりで、自由を謳う彼らに素よりロマンチストのお嬢様は胸を打たれて足繁く通うようになる。殆どの男はお嬢様がまだ若いこと、無垢であることから敵意も見せず逆に近づきもしなかった。

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しかし毒を避ける生物がいれば、毒を栄養に食らう生物もいるように、お嬢様に近づく男がいた。これは真実お嬢様の又従姉妹に当たるが、親の代に勘当を受け零落している。容姿に恵まれ気品を残しながら日々の肉体労働で体は鍛え抜かれていた。健全な肉体に健全な精神が宿るとは限らず、非道な男だった。

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お嬢様は一族のよしみで心を許した。一族を離れ活動家であるのも気高い振る舞いに見えたのだ。実際のところ男は女に養ってもらうために活動をしているのだし、界隈で女を孕ませてはのらりくらりと逃げているので評判は散々だった。そのことを周りがうら若いお嬢様に遠慮して伝えないのもいけなかった。

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あっという間にお嬢様の体は恐怖と恥辱を植え付けられた。お嬢様は二度とその活動に顔を出さなかった。男はお嬢様が一族に活動を告げ口しそうだから口止めしたのだと仲間に言い張った。お嬢様は屋敷にこもっていたが月のものが来なくなったことに気がつくと外出を増やし、毎日彼岸花を切っては活けた。

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変化に気がついたのはお祖母様で、わけも聞かずお嬢様を連れて山奥の旧邸に引っ込んだ。旧邸は前世紀まで使われていたが今は夏場の避暑に使うのみで電気もない。古い使用人が近くに住んで世話をしているが普段は人通りもない寂しい場所である。そこでお祖母様は事情を聞いて泣いた。

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不憫で泣いたのではない。止めるのを聞かず世に出した息子の軽率さと、人を疑わない孫の浅はかさを嘆き、あれほど大切に育てた花が枯れてしまったことを悔しがったのだ。お嬢様は土下座したが覆水盆に返らずでお祖母様の穢らわしいものを見る目に変わりはない。彼是試したが流れることはなかった。

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臨月となってお嬢様は一人で育てる覚悟を決めるのだが、苦労して産み落とした直後赤ん坊は産婆に口に綿を詰め込まれ首を絞められて死ぬ。死体はすぐに庭に埋められお嬢様も心労と無理がたたって数日死の淵をさまよう。何とか回復したものの声が出なくなっていた。それから数年お嬢様は旧邸で過ごした。

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お祖母様の死後、女が1人で暮らすわけにもいかず、また良い頃合いとしてお嬢様は嫁に出される。しかし幼い頃に夢見たような立派なお屋敷ではなく年のいった地方の豪農の後妻としてだった。傾きかけていた家にとって最早若くもなければ生娘でもない娘を食わせてくれるならと必死の縁談だった。

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嫁入り先は子供達も十分に大きく働き手として求められたのではなかった。かつて見下していたダリアよりも薔薇のお姉様方よりもお嬢様はただの娼婦となったのだった。それでも重労働を求められず、にこにこ笑っていればよいのでお嬢様には簡単だった。長く子供はできなかったが数年後身篭った。

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夫は年が離れていたし下品で乱暴者だったが生まれた子どもを溺愛した。さてその田舎には害獣避けに至る所に彼岸花が咲いていた。勿論ガスを生成しない普通の彼岸花である。お嬢様はいつしかあんなに愛したあの花たちよりも、このどこにでも咲いているありふれた彼岸花を愛おしく思うようになっていた。

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子供を育てるうちに声が戻り義娘も喜んでくれた。夫は声が出るなら楽しみが増えるという工合、姑も舅ももういないのが何より良かった。やがて兄弟も生まれお嬢様は三男三女の母となった。一番下の娘が歩き出した頃である、実家の父親が危篤と連絡が入った。もう継ぐ者も継ぐ財産もなくなっていた。

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帰ってみれば屋敷も庭の植物も全て売ってしまっていた。父親はすっかり農家の女になったお嬢様を見て落魄よと泣くと死んだ。電気の通らない旧邸で葬儀を行うことになりお嬢様は喪主となったがいざとなれば己の境遇が浅ましく思え叔父に頼んだ。あの数年を過ごした旧邸に行くのは気分が重かった。

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葬式に出ないわけにもいかず旧邸に入りてきぱきと炊飯の指示をしたがその振る舞いが下賤にうつったようでかつて薔薇だった婦人らに笑われているような気がした。公には病気で臥せったことになっているが、恐らく誰もが知っていた。その中の1人にあの男はお祖母様の指示で殺されたことを耳打ちされた。

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1人だけ連れてきていた一番下の娘に動揺が伝わったのか、環境が変わった疲れなのか、通夜の晩高熱を出して寝込んだ。お嬢様は必死の看病をするが、すればするほど生まれておぎゃあとも言わず死んだ子のことが思い出される。祟りではないかとも思う。帰ろうとする住職にこっそり打ち明け読経を頼んだ。

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お嬢様は埋めた場所をうっすらとした意識の中でしか覚えておらずお祖母様も教えてくれなかった。恐らくこの辺りと住職を招いてお嬢様はぎょっとした。そこにはあの彼岸花が群生していた。あの家にだけ咲いていた曽祖父のコレクション。庭ごとあらゆる苗も売払ってしまったと聞いていたというのに。

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それもあの庭に咲いていたような僅かな量ではなく一帯を埋めつくさんばかりに咲いていた。住職は酸に当たったのか咳き込む。お嬢様はとりつかれたように花の根元を掘り返す。大人の男のさして古くないだろう指が見えてお嬢様は声を失うと花畠に飛び込んだ。住職は経を唱えながら後ずさり遠目に眺めた。

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後に住職が語ったところによると、お嬢様は花に吸い込まれたという。実際には何らかの理由で毒性が強くなったガスによって溶けていったのだろうが、まず顔が消え、首が消え、肩が腕が胸が消えたという。あたかも花に吸われるように。足はしばらく残っていたが、それも花弁が落ちると消えた。

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嫁ぎ先から骨を送れと言われたが骨もなくなっていたので出来ず、おおかたお嬢様は田舎暮らしに嫌気がさしていて住職は逃走を手助けしたのだろうと噂された。一番下の娘は回復したがそこに居合わせたのも縁だということでお嬢様の従兄弟で後継に恵まれなかった親族に引き取られた。

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田舎に残された子供達は随分不自由な思いをしたが成長しそれぞれ田畑を持ったり町へ出た。実業家一家に引き取られた末娘は賢く美しく育った。大きな時代の変化を受けたためか元来の性質か、娘は恋人を生涯作らずただ植物の研究を続けた。年頃をだいぶ過ぎてから親族から娘を養子にもらい育てたという。

(2015/9)

「私が読みたいBL小説のあらすじその2」

読みたいというより「これは許せん」から派生の「だからこういうのが読みたい」です。短め。

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私が「女みたいにかわいい」が許せるのは、それがラブではなく暴力である時です。独りよがりなゲスが「お前女みてえだな」とか「そちはおなごのようじゃのう」って言ってきて、抵抗した被害者がもののはずみでゲスを殺してしまってからの逃亡とかならむしろ好きですよ…

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先日の「女みてえだなと言われ辱められそうになった青年が、抵抗したはずみで相手を殺してしまったBL」ですが、私の脳内で続きが上映されました。
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(ここからあらすじ)
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自分の行いに驚いたのと息を吹き返したらまた襲われるか殺されるかもしれないという恐怖で青年はその場を逃げ去る。様子がおかしいことに気がついた優しい人たちが声をかけてくれるけど殺してしまったとも襲われたことも明かせず、あたたかな場所を遠ざけて夜の街を徘徊するようになる。

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姉御肌の女に声をかけられ部屋に転がり込む。男女の仲になるのかと思っていたら部屋に女のヒモがいた。青年は女のヒモの商品になり、あんなに抵抗したのに結局男相手の仕事をすることになって「女みたい」が売りになった。

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そのまま8年が過ぎ、一緒に暮らす男もできて商売からは足を洗っていた。殺したと思っていた相手は生きていたことを風の噂に聞いた。それから幾つかの出会いと別れがあったが、最後のパートナーと20年一緒に暮らした。パートナーを亡くすとひとりで静かに生活をした。

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傍目には孤独な老人になっていったが、老いれば老いるほど男女の区別はつかなくなり美醜も判別が難しくなって彼は幸福だった。介護実習でやってきた女子大生に淡い恋心を抱いて、彼は死んだ。ハッピーエンドになった…

「私が読みたいBL小説のあらすじ1」

あらすじというか思いつきなのでネットスラングとかひどいです。

<第1部的な部分>

私にとってのBL的な萌えが何かと言うと、低俗で卑怯な中年クソジジイに父性と友情と愛情と母性と憎しみを性的な衝動に変換して粘着な愛情を注ぐ無機物のような美青年という構図ですね。

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絵に書いたような下賤を極めたおっさんではダメで、そこらへんにいるような小心者で見栄っ張りで悪い人ではないけど流されやすい小市民というのがいいですね。

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美青年は間接的に殺せばいいですよね、おっさんを。直接じゃなくて付き合いで飲酒量が増えたとかそういう、おっさんが小市民であるがゆえに抗えない理由を美しさゆえに築いて。それで美青年も小心者のクズだから罪悪感を抱くんだけど打ち明けることも出来ず、自暴自棄になるといいですね。

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自暴自棄になった美青年にストーカー気質のメンヘラ女が肉便器を名乗り出るんだけど青年に愛はないし性嗜好も異なるから正真正銘肉便器。このクズ美青年が女を棄て男に走るとメンヘラ女は肉便器である限りすてられることはないという自負が防波堤になっていたので思い詰めてODとかするんですよ

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ODしたことでメンヘラ女の自称友だち(多分ネッ友?)が美青年を責め立て美青年はおとなしく話を聞いて反省するそぶりをするけどそれよりもあわやまた間接的殺人をおかすところであったという恐怖の方が大きいのですね。その恐怖をたいして好きでもない男に愛情という名の執着を向けて誤魔化すのです

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メンヘラ女は不幸な自分が好きなのでそれ以上の追求はないけど背景色#000000のブログにつらつら書くんですよ、美青年くん忘れられないよ…あなたの声も…肌も…みたいなのを。その存在は美青年を苦しめるんだけど、それがある限り生存している証明であるから安心もするというアンバランス美青年

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美青年は持ち前の不眠症が悪化し淫獣のように男たちの家を渡り歩くようになるのですね。でも小心者なので性病対策は怠らないのです。どうなってもいい構うもんかみたいなこと言いながらどうかなるのは困るのですね。イライラ。でもそういう不安定で不健康な生活で退廃した雰囲気がまた色気になるのです

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このクズ美青年には自殺するという発想はないんだな。ただ責任の追及から逃れたいというのが行動の原動力なんだけど、彼がおかした罪というのは罪というほどの罪でもない。それを人類最大の汚点のようにすら感じているんです。

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紆余曲折の末に嗜虐的な精神科医のおっさんのもとに辿り着いて、おっさんは美青年を罵倒し時には殴ってさえくれるんだけど、何分小市民なのでそれを背負いきれないんだな、後悔しまくって、青年の前から姿を消してしまうのだ。その頃には美青年もアラサーになっていて美しさに翳りが出てきているのだ

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昔相手してくれた男たちは女と結婚してたり特定のパートナー見つけてたりしてもう構ってくれないんだよ。思い余ってメンヘラ女に連絡してみるけどメンヘラ女ももう脱メンヘラして銀行員と結婚して一男一女をもうけている。

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ろくな仕事もしておらず、半端サディスト精神科医がくちききをしてくれた職場も全員が自分を棄てられた惨めでみっともない男だとあざ笑っている気がして耐えきれずやめてしまう。半年ほどネット廃人と化す、最初の三ヶ月は自慰にふけるがそれも飽きろくにのまず食わずの日々。家賃を滞納してしまう。

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実家に帰るか迷うがこれまでのことを厳格な家族に話す勇気はなく就職する元美青年。部品組立のライン業務に就く。一月経った頃に部署の違う小汚いおっさんに声をかけられホイホイ部屋にころがりこむ元美青年。家事洗濯諸々やらされる。おっさんは女代わりが欲しいのだと気づき後悔するがもう遅い。

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おっさんはそれまでのおっさんよりも遥かにクズなので元美青年とできてることも枕事情もべらべら喋る。若手のクズの一団が早速元美青年を囲んで色々して本物のクズは限度を知らないので元美青年は死にそうになるが死なない。気づけば病室で両親が泣いているのを見て初めて生きていることを悔やむ。

<第2部的なところ〜DVマン誕生〜>

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実家に連れ戻される元美青年。この時には殴られた痕で顔が歪んでいる。元美青年は自分の容姿しか自信がなかったので完全な引きこもりとなり外へ出ない。食事も部屋でとり、酒ばかり飲む。外へ出そうと厳格な父が力技ではかると暴れる。元美青年は父の力が衰えたことを知りそれが悔しくDV男子になる。

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DVマンとなってからは出会い系で美少年を漁りペットのように扱う。お金は暴れれば両親が出すと知ったので財源に困らない。だがその事情をペットの1人から聞いたノンケDKがある日現れて元美青年を責める。元美青年は父親だけを相手にして勘違いしてたので殴ろうとするが現役DKの方が強かった。

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ノンケDKは親は優しいし恋愛は異性とすると思い込んでるクソセルジュなので説得を試みるが元美青年は流石に何人もの男を渡り歩いただけあってんなこたないと知っているのでノンケDKを引きずり込もうとするがノンケDKはセルジュなので頑として断り友だちになろうとか抜かしやがる

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ちなみにこのノンケDKが元美青年が最初に執着してたキングオブ小市民のおっさんの次男だったりする おっさん転勤してた

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でもこのノンケDKは死ぬよね!経緯はよくわからないけど父親を元美青年が殺そうとして止めに入って死んでしまうよね!

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元美青年は自分が九死に一生で生き延びたから死なないだろうと高を括るけどDKは死んじゃうんだよ!これで初めて元美青年は直接人を殺したことになるね!そしてその父親も自分が間接的に殺した(と思い込んでる)ので、元美青年は抱えきれなくなってしまって取り調べやらなんやら全て生気なくするよね

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刑期のことはよくわからないけれど何分DV男子だったので割と厳し目の判定になるね!裁判員裁判的に!でも死刑じゃないので元美青年は死にたくて仕方ないけど生きなければいけないね!刑務所入ってる間もしんでしまいたいと言っては怒られるね!

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週刊誌やワイドショーやネットのまとめが面白おかしく書くから同性愛自体非難されて元美青年はあちこちから責められることになるね。でもそのことに安心してしまう元美青年がいるんだよ、これでようやく全ての罪を抱えないですむとホッとして弁護人か何かよく知らないけど話聞いてくれる人に色々話すよ

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あんまり考えてなかったけど多分原体験としてスーパーボールを投げたら金魚に当たって金魚が死んでしまったみたいな体験があるんじゃないだろうか元美青年。

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その時にすべての行動に責任を持てと厳格な父に叱られたとかありそう。

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元美青年は根は真面目な小市民なので模範的な服役囚になるけど罪の意識に苛まれて自分のような人間が模範囚として刑期が早まってはいけないと思い詰めたりする。顔は歪んだままにしても規則正しい生活で痩せていきかつての面影を取り戻す元美青年。でももうおっさんになっている。

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出所が近づいた日、1人の美青年が面会にやってくる。元美青年が殺してしまったDKの友人=元ペットである。パートナーと定食屋を始めたから出所したら働かないかという話だった。「彼が生きていたらきっとそうしたと思うのだ」元ペットはノンケDKのことが好きだったのだ、、、

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ちなみにパートナーはオカマで、定食屋は釜めし屋。

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一度だけメンヘラ女から手紙が届いた。子を持つ親としての悲しみを綴り、最後に、微妙に未練をちらつかせているあたりに元メンヘラ女らしさが光る(主婦うつは当然通過した)。かつてはそれを嫌悪しただろうけどもう元美青年はそれを穏やかに受け入れるくらいにはおっさんだだった。

<第3部〜シャバに出たぜそして伝説へ〜>

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出所して定食屋に就職した。ノンケDKの母親に謝罪しようとしても拒否された。亡き夫が一時期若い男と浮気していたことをぼんやり知っていたようだった、それで息子には厳しく男女愛が本当なのだと教えたのだった。だから元美青年がまさか当該の人とは思わないが、同性愛者を許せないのだった。

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元美青年は今はもう自殺したところで誰も救えないと知っているので自殺はしないが一切の性欲を封じた。たまに元ペットに欲情しないこともないが、自分のことは自分でできるのです。父親はもう心労からか死んでいる。たまに会いに行く過干渉の母親は彼の顔色を伺って怯えている。色々トラウマなのだ。

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数年は元ペットのところで働いていたが、やがて元ペットがパートナーと別れることになりお店をたたんで離散する。元美青年は寮完備の工場で働く。ライン業務で誰とも話さないようにするが、そんなわけにもいかないのでぼちぼちと友だちができる。かつての苦い記憶から性癖は隠す。

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寮完備といっても同僚と相部屋で狭くてプライベートはない。同僚が働き盛りで失職した真面目なおっさんで、正社員を目指してると言いながらも遅くまで酒を飲んで遅刻したりするクソ。でも元美青年はそもそもそういうクソが好きなので、好意を隠しながらもやけに密着したりしてしまう。

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同僚のおっさんに気持ち悪がられ、部屋を変えられてしまう元美青年。瞬く間に噂が広まる。前科持ちという噂もあったのでかつてみたいにいじめはないが避けられる。が、朴訥とした青年が近づいてきて、自分も実はそうだといい、部屋にころがりこんでくる。

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朴訥青年のことは好みでも何でもないのだけれど、嬉しくてついつい手を出してしまう。朴訥青年は朴訥というか見た目キモヲタなのでその日からいじめを受けるが元美青年がいるから耐えられるんだと目を輝かせる。

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いじめはエスカレートしていく。元美青年は自分が死にかけたことやDKが死んだことを思い出し、朴訥青年と工場を出ることを決める。元美青年は次期契約をサインしなかったが朴訥青年は朴訥というかアホなのでよくわからずサインしてしまう。辞めるのは悪いことと朴訥は思っているので2人は別れる。

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朴訥を残してひとり街に戻った元美青年は毎夜朴訥青年が寮の裏の駐輪場で同僚や上司に犯され殴られ殺される夢を見る。受刑中に寛解した不眠症が再発する。起きるたび「また殺してしまった」と怯えているのに興奮していることに気がつく。

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毎朝ネットニュースで朴訥青年がニュースにあがっていないかチェックして、何事もなければ安心してもういい年だけど射精する。だが射精の後にまた「まだ明るみに出ていないだけでは」「会社ぐるみで隠しているかも」と不安が募り、食事も喉を通らない。新しい職場の作業着はすぐぶかぶかになった。

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ある秋の日に大雨があり川が溢れて避難所暮らしをすることになった。しばらくして救助が遅れた施設の老人たちが避難所にやってきた。その中に自分の母親の姿があった。身内を探しているので名乗ったが母親は「こんな醜い怖い顔のおじさんは知らない。息子は天使のように美しいのだ」と泣きわめいた。

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痴呆なのだと職員に説明を受けていたところに親族が現れて元美青年は近寄るなと怒られる。避難所のトイレで鏡をみれば、不健康に痩せ衰えた初老の歪んだ顔の男がいた。しばらく昔のことを忘れていたが蘇り苦しくなる。少年時代、母は美しい息子が大好きだった。全身をなぶられたものだった。

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トイレで愕然としているとDC数人に囲まれて性癖をからかわれて嬲りものにされる。でも元美青年的にそれが久しぶりで、妄想の中の朴訥青年に自分を重ねて恍惚とする。その気のない若者が遊び半分にした後の展開は学習しているので、外出するフリをしてそのままライフラインの復旧してない町へ出る。

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雨は断続的に降り復旧が進まない。増水している川へ行き身を投げようとしたが警備が厳しい。ところどころに出来ている大きな池に意図的にはまって歩く。池の中のがれきで足を傷つけて血が滲んだ。元美青年の歩いた後に血の道が出来た。元美青年はDKの家を目指して歩いていた。

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DKの家っつっても、普通に歩いて行ける距離ではないのだ。なぜなら山奥の工場を出た後は実家から離れた田舎のほうに住んだから。老人施設もなぜか大抵不便な田舎にあるので母親と再会したのはそんな理由。とにかく歩けない距離を歩こうとしていた。歩けなくなった時に死ぬのだと思っていた。

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暗くなって前がみえないので腰をおろした。また雨が降ってきた。凍死するのかと思った。あの世でDKに会っても合わす顔がないと思った。朴訥青年のことはすっかり忘れている。

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目が覚めたらどこかの家だった。アパートのようだった。男がいて、それがあのDKの父親でクソ小市民のおっさんとクリソツなので悲鳴をあげた。男はDKの兄だった。DKが死んだことがきっかけで破談になって以来独り住まいなのだという。男は元美青年が誰かを知っていた。

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殺してやろうと思ったけど頃したら犯罪者である元美青年と同等になるし殺す勇気もなかった。放置しようとも思ったが自分は保安警備が仕事なのでできなかった。かといって公的機関に預けてのうのうと安心させることもしたくなかったと語る男。

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元美青年は最初はただの風邪みたいだったが高熱が出て日に日に悪くなった。男は元美青年を看病したり罵倒したり首に手をかけたりした。仕事に行くときには必ず飲み物とおにぎりを枕元に置いた。入院するかと聞かれたが、元美青年は拒否した。男はある日青ざめた顔で出ていった。そのまま帰らなかった。

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その意味を了解したので元美青年は男の残した飲み物と食べ物を摂取するとあとは弱るに任せた。最後の力をふりしぼって家中をめちゃくちゃにした。弱って射精もままならないのに自慰をして部屋を汚した。しばらくして熱が下がったがからだがひきつるようになった。

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からだがそりかえり痙攣し息ができない。死の前にはこれまでの出来事をおもいだすと思っていたがそれすらない。痙攣して苦しいだけが記憶に残った。死因は痙攣を原因とする窒息。隣室の住人が「呻き声が聞こえなくなったのに誰も出入りしないから怖くなって」通報し発見された。

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元美青年の葬儀は男から連絡を受けた元ペットが取り仕切った。親族はとりあわず無縁仏として処理される。元ペットはパートナーとよりを戻してバーを始めたところで、「また呼ぼうと思っていたのに」と泣いた。不審死として少しニュースになったので後から朴訥青年もやってきたが新しい男を連れていた。

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男は責任を問われたが現場の状況と元美青年の前歴から、暴れて手がつけられず身の危険を感じて逃げたのだとする証言が受け入れられた。男のひそやかな復讐は静かに終わったのだった。

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おしまい(2013/9/1-9/2 Twitterのログより)

あらすじの解説

ツイッターで気がついたのは、ツイッターで「こういう設定のお話が読みたいんだわー」のノリで書いていくともれなくあらすじができるということです。小説にしたい方、お願いしたい。

副流煙と一本花…BL短歌というジャンルを知り、五七五七七をじょうずにつむげないながらも頑張ってみました。たまに考えたら増やしていきたい。

私が読みたいBL小説1…私が読みたいのは甘々のLOVEじゃないんだ…

私が読みたいBL小説2…私が読みたいのは女みたいな男と男みたいな男の絡みじゃないけどこれならありなんだ…

彼岸花に吸い込まれて死ぬというかっこいいシチュエーション…私の中二趣味がずれていることは知っている

風姿花伝の変声期のくだりを読んでたら思いついた…第二次性徴期という衝撃が思いの外尾を引いたBLあり百合あり

架空アニメ「クラフト母さん」あらすじ…ツイッターで通勤電車でだらだら書いて途中で終わりました。

副流煙と一本花

   マルボロを一本くゆらせ青空でお前と俺とひとつになれる

彼はその日、たまには実家に帰るからと事務所を出たのだった。着替えを持ってきたいし、新しいソフトを持ってきたい。相変わらずワガママな少年を見送りもせず私は仕事に没頭していた。
騒がしい救急車両の音は騒がしい、くらいにしか思わなかった。たまたま来た顧客があれはきみの弟子じゃないかと教えてくれなかったら、私は彼の身に起きたことなど知るよしもなかった。

  おまwwwwww急にww強制終了wwwwwwwwwwwwwwふざくんなwwwwwwビープ音wwwwとかwwww聞かせろやコラ

  「将来は副流煙で死ぬな、俺」残念wwwwwでしたwwwwwww不慮wwwwのwww事故wwwwww泣くwwwwwwww

  (黒に浮く「赤の他人」の抹香を取り払う肩細く震ゆは)

  お前の名つけた戦士がレベルアップした「正午過ぎ」wwちょwww次元www移動wwww

  煙wwwwwこれwww復讐なのか嫌煙家wwwwニコチンないしwwww全部吸ったるwwwwwww

  ふざけずに文を書けってこれでなきゃ平静さなど保てやしない

彼は10近く詐称して私のような趣向の人間がよく使うインターネットサイトで連絡をよこした。それが始まりだった。子供になど興味はなかったが押し切られた。住むところがないとしつこかったのでアルバイトならと採用した。資格も学歴もろくにない。教えてもまともに取り合わない。たまに姿を消してはゲームやアクセサリーを持ち込んで事務所を混沌とさせた。
酒も煙草も未成年だから私は与えなかったが、酒は隠れて舐めているようだった。煙草はからかいたくなるほどに嫌がっていた。わざとらしく咳き込む少年に煙を吹きかけるのが私の戯れだった。

  ーー犬っぽいとかwなめんなしwwwww二年あったらあんた越えるし!

  ーードラクエもやったことないwwwwまずキャラを作って名前は俺のにすんの。

  ーー帰宅なうーw服もwwからだもwwwwwwヤニくさいwwwwww将来はwwwwww副流煙で死ぬwwwww

冷却音 ログインパスがわからずに ノートブックのバッテリ減りゆく/ 木曜は燃えるごみの日 口結ぶ ポテトチップもエンゼルパイも/ マルボロの灰で山作り火をつけて ひとりであげる南無阿弥陀仏

  (きみにより思ひならひぬ世の中の人はこれをや恋といふらむーー在原業平)

  いとしいや こひしいや、あいたいや  おい布団冷えちまつたぞ馬鹿野郎

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少年の死は新聞記事に小さく載った。判別が難しい事案だった。少年にも少なからず非はありそうだった。だが車両にも問題はあった。記事の小ささは消してその母の悲しみの大きさに比例しなかった。女はままならないことの多かった日々を思い起こし、不在がちだったことを男の子だからと騒ぎ立てなかったことも悔やみ、泣きぬれるばかりである。
ようやくその身を起こし、息子の私物を整理し始める。気難しい少年は母に何も話してはくれなかった。いつからか彼の友達のことなどまったくわからなくなっていた。

  一本花の白さみし きみかけしひさかたの天へ 色もうつりぬ

  きみがため享けし枕は垂乳根のおはるもあるを知る ゆくりなく

  荒海の凪がぬあらじと波たへてきぞまでを わた消えるなどつゆも

携帯電話のパスワードはすぐにわかった。誕生日に決まっている。そういう性分だった。そのなかでひときわ多い発着信の相手の名前を見とめる。種々の疑念が頭をよぎり立ちくらみがしたが、母は意を決する。

日のゆきて 名残の品を定めんと 帳面開き その人を知る/吾子や吾子 吾子吾子吾子や 吾子や吾子 おまへのゆるす人に会いにゆく

—-

時を経て、わだかまりがないではないが、時折女と彼は連絡を取る。
盆行事に呼ばれるが丁重に断りを入れる。やはり何かが違っている。一緒にはいられない。
俺には俺の、盆会がある。

  迎え火の代わりと煙草に火を灯す 迅速に来いよ でなければ行く

  線香の煙や憎し夏の宵 甘めのカレーを用意して待つ

  タバスコと七味と一切れのピザと 今宵限りだビールも一献

  血縁の者らも集へるきみがため 今生きてれば美男子の吾子

  いずこなりとも風吹かば思い起こせよ一ツ花 荷物は持ってけ

接触

 曇った窓から外を見た
 町工場の煙突が雲に紛れて煙を吐いた
 私はそれを見ながら溜息を吐いた
 今度は二人で横浜に行こう
 何かをスケッチしながら彼がそう言った
 横浜よりも鎌倉がいいわ
 私が答えた
 アパートの前の寂れた薬局では万引きが起きていた
 店主が中学生の首根っこをつかみ何か怒鳴っていたがその言葉を私はしっかり聞いていたわけではない

 彼は何を描いていたのだろう

「絵描きの彼氏は元気?」
 久しぶりに会ったあっちゃんが、チューハイをグイッと飲むと、何かのついでのように尋ねた。実際彼女にとっては「ついで」に過ぎないのかもしれなかった。酒の肴にもならない程度の。
 私は「自然消滅」と答えて、初めて「ああ、彼とは終わったんだ」と気がついた。別段寂しさもなければ悔しさもなかった。そこには愛がなかったわけではないと思ったが、愛がなければ付き合っていけないわけでもないし、愛がなかったことにしてもいいか、とぼんやり考えた。
 あっちゃんは「悪いことを聞いてしまったね」と言ったが、口調はちっとも悪びれてなかった。それでよい。彼女は飲み友達として最適だ。
「あっちゃんこそどうなの?反町隆史似の彼は」
 私は数ヶ月前に聞いた「合コンで知り合ったんだけど、超かっこいいの」という彼の話題をふってみた。だがそれは私の話題から転換させたかったから、というわけでもなく、挨拶のようなものだった。高校を卒業してから、女友達と会えば男の話になっていた。別段自慢しているわけでもなく、ただただ、「彼氏」というものが高校時代よりも密接に自分に関係するようになっていた。それだけの話だ。
 あっちゃんは私の背中を叩いて「何でそんなこと聞くの」と笑い、「熱々だよぉ、勿論」と言った。それから「クリスマスなんてねぇ、二人で温泉行っちゃってさ…」と話し始めた。聞いていないわけではないが興味津々で聞くわけでもない。彼女はそれでよいと思っているだろう。あっちゃんは飲み友達としては最適だ。
 反町隆史似の彼氏が本当に反町隆史に似ているのかどうかは定かではない。アバタもエクボとやらである可能性は多いにある。だが、本当に反町隆史に似ているのだとしたら町を歩く時は快感だろう。「あの人反町に似てる」と誰かは指をさし、それは嬉しい視線だろう。

 「絵描き」と町を歩くことは少なかった。私が出歩きたい性格ではないことも影響している。会いたくなったら私は「絵描き」の部屋に行った。そこは町工場が密集している汚い地域だった。家賃は案の定安かった。「絵描き」という自称職業は、そのチープさに彩りを添えた。
 たまには町を歩いた。「絵描き」が絵の具を買いたがったり、私が食事をしたがったりした。「絵描き」はそのときもスケッチブックを手放さなかった。街角で面白いものを見つけると、まず私にそれを教える、などということはしなかった。すぐにスケッチブックを開いてシャツの胸ポケットから鉛筆を取り出すとスケッチを始めた。私はその間、「絵描き」のシャツの裾をつかみながら「絵描き」とは別の方向を見ていた。人の流れを見ていた。人々で溢れているのに、人々を取り巻く社会は恐らく二、三人なのだろうことは推測するに易かった。それらは交わることなく過ぎていく。肥大化する社会では、むしろ人間の社会はミクロ化していくのだと、そんな話を社会学の講師の顔と一緒に思い出した。
 スケッチは大抵三分もかからなかった。「絵描き」はそのときになって初めてスケッチブックを私に見せて「これ、面白いだろ」と言うのだった。それでようやく私は「絵描き」がとらえていたものを見つけ出し、「なるほど、面白い」と思うことが出来たのだが、そのときにはもう「絵描き」は別のことに関心を移しているのだった。

 そんな関係も決して嫌いではなかった。

「それじゃあさ、それじゃあさ・・・まいこたんは今、フリーなんら、独り者なんら」
 そろそろろれつがまわらなくなってきたあっちゃんを見ながら、次のオーダーは止めさせよう、と決めている。彼女は私よりも酔ってくれる。飲み友達としては最適だ。
「そうね。フリー…じゃないかな」
 私は少し考えた。
「違うの?まーこたんはもう新しい男を作ってるの、いやらしい」
 新しい男、というほどでもなければ、いやらしい、と言われるようなことはまだ何もない。彼を愛しているのか、と言われればわからないし、それを考えれば、さっきと同じ、愛していなければ付き合えないわけでもない、という考えに至る。
「新しい彼氏はぁ・・・また絵描きなのぉ?」
 私はウーロン茶を一つ注文した。このへんの大学生だろうアルバイトが少しハスキーな声で「ウーロン一つ」と奥に声をかけた。
 また絵描きなの、と言うほど私は人と付き合っていない。絵描きと付き合うことは彼が初めてだし、恐らくこの先はそんなことはないだろう。大学を卒業すれば経済的なことも考えねばならなくなってくる。だがあっちゃんにいわせれば「個性的なまいこちゃんには個性的な彼氏がぴったり」なのだそうだ。少し笑う。
「普通の学生だよ」

 すぐに会える距離が一番の魅力かもしれない

 三ヶ月前に引っ越した。
 以前住んでいたアパートから学校は遠かった。これから卒論で忙しくなるし、そうすれば学校に近いほうがいいだろうと思った。「絵描き」のアパートからは五駅も離れた。会わなくなった理由はただそれだけだった。
 彼と親しくなった理由も、ただ歩いて五分の距離に彼の部屋が存在するという、それだけの理由だった。

 アパートではなくマンションだ。
 駅から歩いて10分、コンビニと本屋が目の前にあってオートロック。近くのスーパーには主婦よりも学生が溢れた。部屋にはミスチルのCDと流行の小説が置かれ、彼はあまりに普通の大学生だ。

 窓はカーテンがかけられていた。
「どうして?」
 と私は聞いた。
「だって、外から見られるの嫌だろ」
 と彼は答えた。
「開けていい?」
 と私は聞いた。
「いいよ」
 と彼は答えた。それから立ち上がって、私の後ろから手を伸ばし、カーテンを開ける。バッと光が飛び込んで一瞬目がくらむ。外は眩しかった。埃がふわふわと漂っているのが見えた。
「汚いよ」
 と私は言った。
 彼は私の髪の毛をそっと撫でた。
「掃除して」
 と言った。少し甘えた声で。そういった言葉や仕草には親しみを感じても、不思議とときめくことはなかった。愛されることはあっても愛することはないかもしれない、と感じる。

 窓の外では若者がコンビニの前で自転車を止めていた。彼と入れ替わるようにして年配の男性がワンカップのお酒を開けながら出てきた。
 この近辺では珍しい小学生が三人、ランドセルをカタカタ鳴らしながら走ってきた。
 コンビニと本屋の間の電柱の前で立ち止まる、じゃんけんぽん。
 二回くらいあいこが続いて、三回目にパーで負けた小太りの少年にランドセルが渡される。
 ちょっと笑った。
「どうしたの?」
 彼が私を上から覗いた。「ほら、小学生」私が指さしたときには、もう小学生は駆け出していた。
「小学生、どうしたの?」
「じゃんけんで、負けると荷物持たされるっていうの・・・よくやらなかった?」
 懐かしい、と私が言うと、彼は合点のいった表情になった。「僕もよくやった。いつも負けて、荷物持たされるんだ」
 懐かしむ表情を一瞬するので、私は「共有」という言葉を思い浮かべた。「絵描き」とは何一つ共有することがなかった。それでよかった。
「わかるな。あなたってそういう人よね」
「どういう人?」
「お人好し」
 彼の手が私の肩を抱こうとしていた。だが彼はそこに至れずに、髪の毛を撫でた。

 彼の部屋に出入りするようになってから一ヶ月が経った。
 「絵描き」の部屋に初めて入ったとき、「絵描き」は私を抱き寄せてキスをした。高校二年の時に付き合った野球部員ですら、三回目のデートでキスをした。
 彼は私の肩を抱くことすら出来ず、まるで割れ物を触るように慎重に髪を撫でることだけで私への愛情を示す。

 そういう関係も決して嫌いではない。

「きみは面白い」
 と「絵描き」が言った。
「きみの世界は面白いね」
 意味がわからなかった。
「あなたの世界のほうが面白いよ」
 私は「絵描き」の胸に寄りかかって言った。
「絵描き」はどこか見ながら
「きみと僕は最高の相性だ」
 と言った。

 最高の相性も距離には敵わない。
 いちいち電車に乗ってまで出歩くのは好きじゃない。

 年度末が近付いてレポートを4本抱えた。
 テストもいくつかあったが、「持ち込み可」のやる気のない講義だったので私は何一つ対策を取らない。私は比較的標準的な大学生だ。
 二週間、彼の部屋に行っていない。
 このまま付き合ってもいいかな、と思っていたけれど、このまま会わないで付き合わないのもいいかな、と最近思い始めた。テストが終ったら合コンしない?という話を由利と浅江がしていたし、「彼氏」が欲しいなら適当に合コンで見つければいいか、と思った。別段欲しいとも思っていなかったが、何かの付属品のように、たまに欲しくなるときがあるので、持っていて不便はないと思う。
 テレビをつければバレンタイン特集だった。何か彼にあげようかな、とも思ったけれど、いちいち会いに行くのも面倒だったのでやめた。作るのも面倒だったし、彼のためにチョコを選ぶ気持ちも起きなかった。

 課題のうちの二つは難なく片付いた。誤字脱字のチェックだけをすると、文章構成はさほど気にしないでファイルに挟んだ。明日の昼に提出しに行こうと思った。
 三つ目はなかなか進まなかった。
 久しぶりに町に行こうかな、と思った。気分転換は重要だ。

 冬物のセールをやっていた。
 あまりお金も持っていなかったので二着だけ買った。
 駅に入ると「絵描き」に会った。
 「絵描き」は少し驚いた表情をした。私も驚いたので、珍しく二人は「共有」したのだといえる。

 「絵描き」の部屋は相変らず町工場にあった。相変らずそこは汚くて、「絵描き」の貧乏も公害のせいではないか、とありえないことを考えた。
 扉を閉めるとすぐに私を抱き寄せた。「絵描き」は手順も変わらなかった。

 「絵描き」がトイレに立つと、私は上半身を少し起こして、窓から外を覗いた。
 町工場の煙突は相変らずだ。
 今日のような曇りの日には煙と雲が区別つかない。
 薬局には体格のいい作業着の男が入っていった。
 少し考えて
 もしも「絵描き」ではなくあの男に抱かれても私はきっと平気だろう
 と思った。
 愛し合う必要が感じられなかった。
 もっとも、「絵描き」を愛しているのかといえばそれも怪しい。

 だがそれでよい。

 「絵描き」はさすがにトイレと風呂にはスケッチブックを持ち込まない。私を抱いている間も決して開かない。
 枕もとで見つけたスケッチブックをめくると、私が描かれていた。それは恐らく、「絵描き」が私を抱いているときに見た「私」であった。
 少し嫌悪感を覚えてスケッチブックを閉じた。
 「絵描き」は戻ってくるともう一度私の体を舐めまわした。正直私は帰りたかったが、帰ったところでいいレポートが書けるというわけでもないのでそのままにした。抱かれながら「絵描き」のことを考えた。
 そういえば私と「絵描き」はこの時間すら「共有」したことがなかった気がする。私はいつも何か考えながら抱かれていた。「絵描き」も恐らく私を目に焼き付けてスケッチブックに描写することを考えながら私を抱いていたのだろう。そしてその絵は枕もとに置かれ、「絵描き」を慰めていたのだろうか。
 だとすれば「絵描き」は私を本気で愛していたのかもしれない。

 彼の部屋に行かなくなって四週間が過ぎた。彼が私の部屋に来ることも少し期待していたが、肩も抱けない彼にそれは無理だとわかっていた。
 当然のように、「絵描き」の部屋にはあれ以来行っていない。「絵描き」が私の部屋に来ることもなかった。
 長崎との遠距離恋愛をしている美咲が、「どうしても会いたい」と言ってテストが終わった直以後に飛行機に乗った。昨夜「会って良かった、泣き言ばっかり言ってごめんね」とだけメールが入った。それから先はメールが来ないから仲良くやっているのだろう。

 歩いて五分さえ億劫になっている私に、美咲が少し羨ましい。

 どうしてこんなに近い距離に住んでいながら四週間の間、こんな偶然がなかったのか、と思ったが、私が出歩かないせいだと気がついた。
 コンビニで彼と会った。
 彼は一瞬戸惑っていたようだった。私は戸惑うというより少し驚いた。
「久しぶり」
 そう言うと
「久しぶり」
 と彼も言った。ボキャブラリの貧困さが彼の戸惑いだと思った。

「どうしてた?」
 と聞くと
「テスト」
 と答えた。
「私も」
 と言うと、
「どこも同じだね」
 と笑った。

 彼は牛乳と食パンをかごに入れた。
 私はそこにヨーグルトを混ぜた。
「あなたの部屋で食べていい?」
 彼はもう一つヨーグルトを入れた。

 コンビニを出ると、私の気が少し変わった。
「やっぱり、うちに来ない?」
 彼は本当に驚いた表情をした。それから頬を赤くした。
「いいの?」
 私も自分で言ったことに驚いたので「共有」だと思っていた。
「いいよ」

 彼と私は少し距離をおいて歩いた。距離といっても一メートルも離れていなかった。でも密接している距離ではなかった。言ってみれば恋人同士の距離ではなかった。少し彼が出してた緊張感も「他人だ」と感じさせた。
 向こうから小学生が走ってきた。細身の子が最初にジャンプをした。着地の瞬間、ランドセルと体が揺れた。次に来た子は「ソルトレーク、一着!」と言った。オリンピックが彼らの中では最も旬の話題らしかった。
 小太りの子がやってきて、ジャンプした。うまくいかなくて転ぶ。驚いて少年を見ると、少年は恥かしそうにして、笑って、「ジャンプ失敗」と言った。
「頑張ってね」
 と言うと、少年は前を走っていた子どもに体当たりをした。照れていた。
 ふっと横を見ると、彼は微笑んでいた。
「あなた、ああいうタイプだったでしょ」
 私がそう言うと、彼はまた少し赤くなった。照れていた。

「彼氏は?」
 部屋に着いてから、彼は呟いた。
「え?」
「彼氏は、いいの?」
 言っていることがわからなかった。
 彼の表情を読もうとしたけれど彼はうつむいて、表情が見えなかった。
「彼氏って?」
 彼の顔が少し上になって、うろたえているような目が見えた。
「…最近来ないから、彼氏が出来たんだと」
 私は少し笑った。
「いないよ」
 彼の目が明るくなった。
「あ、そうなんだ」
 私も少し明るい気分になった。
 それからヨーグルトを食べた。
「これ、ちょっと甘過ぎじゃない?」
 彼が言った。
「そうなの?」
 私が言った。
「ほら、食べて」
 彼が紙スプーンにヨーグルトを乗せて私の口に運んだ。
「甘い」
「そうでしょ?」
 彼は、失敗したな、という表情でヨーグルトをつついた。
「でも私、こういうのも嫌いじゃないわ」
 彼は「ふぅん」と言った。
「きみのはどんな味?」
 私は紙スプーンにヨーグルトを乗せて彼の口に運んだ。
「あ、おいしい」
 彼は「ついつい口から出た」という風に言葉を発した。
 私はもう一口、紙スプーンにヨーグルトを乗せて彼の口に運んだ。
 そしてそのまま彼の首に手を回して、私はたしかキスをしていたように思う。

 愛しているとは思っていないけれど、愛していなければキスをしてはいけないわけでもないし、それに、彼がいとおしいような気がしていた。

彼が窓から外を見た
何が見えるの?と聞くと
電柱
と答えた
それから
カレー屋 駅 スーパー ファミレス 大学 マンション
と続けた
私は彼の隣に並んだ
どうして自分の部屋の窓からの景色を私は見たことがなかったのだろう

空も見える
と彼は言った
見れば電線にさえぎられて切れ切れの空があった
鎌倉に行きたいな
と私は言った
春休みはいつが暇?
と彼が聞いた
横浜でもいい
と私は言った
僕はバイトもないし暇だけど
と彼が言った
そして
一泊二日じゃ足りないよね
と言った
最後の週がいいな
と私は言った

彼の手が髪を撫でて、それから肩に回されていることを感じた。
こういうかんじは決して嫌いじゃない。
愛してはいないかもしれないけれど いとおしい。
そう思った。

トモは死んだ

19日午後三時半頃、A県N市にあるアパートの二階で、山口友江さん21歳が、首をつって自殺しているのが発見されました。

「何あれ」
 ユッコは、まるで喉にささった魚の骨を取り出そうとするみたいに言葉を吐いた。
「何だよ。なんでトモ、自殺してんの?」
 ユッコの吐くコトバに、私は笑いたくもないのに笑顔を作って「まったくよね」と言うしかなかった。
 報道を受けて、私は自然にユッコの家に電話をかけていた。
 小学校卒業以来、実におよそ10年ぶりの連絡。中学では、たまに会ったりした程度だった。それも偶発的に。だから、連絡を取るのは、本当に久しぶりだった。その連絡がこんなものになるのは、予想外だったのか。
 それとも、連絡を取るとしたら、やはりこういう時だけだったのかもしれない。
 ユッコのお母さんが、遠慮がちにお茶を持ってきた。私に軽く会釈して、部屋の入り口にお盆を置いて、そそくさと帰る。顔色が悪いのは、どうやら扉の影になっているせいだけではないようだ。
「お母さんと、最近どうなの?」
「冷戦状態ってとこ?攻撃してるのはこっちだけどね」
 ソビエト連邦はとっくの昔になくなって、冷戦なんて小学校卒業するより前に終結したのに、この母子は冷戦を続けている。
 以前来たときと変わっているのはユッコの髪が金色になっていることと、お母さんの髪の毛が白くなっていることか。
「トモってさ…自殺するような子だった?」
 私は、やっぱり喉元にささった小骨を取り出したくて取り出したくて、コトバを出した。
 ユッコはお盆の上のお茶を窓から捨てた。「あんたは飲んでいいよ」そう言い添えるのも、昔と同じ。
「さぁ…」
 お茶が綺麗になくなると、ユッコはベッドに座る。布団から漂う匂いに、オスの人間がこの部屋を頻繁に訪れていることがわかった。
 ユッコ。
「けど、もう十年でしょ?十年あれば、色々あるっしょ」
 さっき「なんで自殺してんの」と言ったのはユッコなのに。
「あたしらだって、この十年、あの子のことなんか何にも知らないでしょ」
 私は頷いた。でも「でも、あの子、いつも楽しそうにしてたじゃない」
 ユッコはベッドに寝転んだ。
 私は手元のお茶を飲む。美味しい。ユッコのお母さんのお茶は、美味しい。
 寝転んだまま、ユッコは布団を被る。埃が舞う。
「十年あれば、人間変わるよ」

 ユッコとトモと私は、小学校の頃、いわゆる「仲良しグループ」だった。
 小学校の頃の「仲良しグループ」なんて、すぐに入れ替わるものだ。 私たちも例外ではなく、クラスが同じ時だけ仲良く集まり、クラスが離れ離れになれば別の子と固まった。
 ユッコは「大体」と言って金髪をかきあげた。髪が、だいぶ痛んでる。
「小学校、3年と、5年の二回だけでしょ?一緒だったのは」
 耳にのぞくピアスに西日が射した。
 その通りだ。
 ユッコと私、とか、トモと私、という組み合わせは他にもあった。でも、三人一緒だったのは、あの二回だけだった。 だけど、その二回こそが私には特別だったのだ。ユッコにだってそれは同じだったと思う。
 だから、私と今こうして会っているんだ。
だって
「…だってそれが、方法だったじゃない」
 ユッコの時間が止まった。
 私の時間も、多分。
 一階のキッチンから、カチャカチャ、お皿を片付ける音が聞こえてくる。
 ユッコは跳ね起きて、扉を開けて、「うるっせぇ!」と階下に叫んだ。
「うるっせぇんだよ、あんた!!!!出、て、け、よ!!!!!」
 と、洗い物の音は止まる。ゆっこの荒い息が残る。その静寂を破るように扉を乱暴に閉めると鍵をかける。それからドアノブを紐で縛った。何重にも。
 小学校の頃は椅子で扉の前を塞ぐだけだった。
 冷戦が進むにつれて核兵器が進化したみたいに、ユッコとユッコのお母さんも、武器を変えていた。
 私は顔を上げた。
「ユッコだって、本当は覚えてるでしょ?」
 ユッコは何も言わない。
「そう、トモはこの十年で何かあったのよ。何か、辛いことがあったのよ」
 ユッコは何も言わない。
「だから、自殺したのよ」
「だったらそれでいいでしょ」
 ユッコは、口の中に入った髪の毛をなめた。
「そうよ。トモは自殺したくなるような目にあったの。だから死んだの、だから首つったの」
「違う、トモは辛いからって自殺するような子じゃなかった」
「はぁ?!あんた、矛盾してるよ?」
 ユッコは、笑った。金髪をかきあげて。
「矛盾じゃないわよ」
「わかんないんだよ。あんた」
 ユッコは、私の湯のみを手にとった。
 窓から、お茶を捨てる。
「あの人のお茶でおかしくなっちゃったんじゃないの?」
 笑いながら。
 ユッコ。
 あなたも本当は覚えてるのよ。忘れていない。わかってるのよ。あなたも。

、、、、、、、、、、、、、
トモは自殺なんてしていない

 一つの確信を持って、私はユッコの、学習机の一番下の引出しを探った。多分、中学校卒業してからは一度もその目的に使われていない学習机。本来の目的を忘れてしまった、忘れ去られた、忘れるふりの顔をした学習机。
「あんた、何してんの」
 ヒステリックな声を、ユッコが出す。「探してるの」
「何もねぇよ!」
 ユッコは私の腕をつかむ。でも、彼女のやつれた腕が、私をとらえることができるはずがない。
 大学のバレー部で、毎日練習してる私と、彼女じゃ違う。
 彼女の腕はすぐにほどかれた。
 それで、そのまま、ベッドに倒れこむ。
 こうやって今までもオスと。
 引出しの中には、キャップを無くしたピンクのシャープペン、卒業証書、夏休みの日誌、単語帳、頭痛薬、リップ、使われていない消しゴム、生理用品、
「そこじゃないよ」
 ユッコは、ベッドの布団をひっくり返した。埃。咳が出る。
「どれくらい干してないの?」
「…中学卒業してから。センセーとヤった記念に」
「有馬先生?」
 私の問いかけにユッコは答えず、布団の下から包みを出した。有馬先生がユッコ。そんな気はしていたけれど。
「これでしょ?探してるの」
 それは、近所のオモチャ屋さんの赤い紙袋に入れられていた。薄さは1センチあるかないか、縦も横も、10センチもない、紙袋。消しゴムのような小さいものを買ったときに使われるものだった。
 ユッコは紙袋をあける。黄色く変色したセロテープは、はがそうとしなくてもはがれた。はがれたというよりも、くずれた。
 その中から、一枚の便箋が出てきた。
 便箋は綺麗なままで。
「これ」
 それは、小学校三年生の頃、私たちが作った、盟約だった。

 私の母は、あの頃地域に根付き始めていた新興宗教に入った。ある日学校から帰ると、母が涙を流して玄関に正座していた。「ミカちゃん今までごめんなさいね」
 母は時折私に手をあげることがあった。それを止めるのは、同居していた母の兄の仕事だった。
 母が謝っているのは、紛れもなくそのことだった。私はなんだか嬉しくなった。あぁ、私は今まで母から罰を受けてきたけど、ようやく許されたのだと思った。
「今までのはね、お母さんの過ちだったの」
 それからあと、母は私にはわからない単語と言葉で、自分の非を訴えた。世界が抹消だとか、彼岸ではなく此岸だとか、救済は終末だとか、だから今までの母は悪であったのだがカンボウ様によって救われたので、これからは世界を良くするために働くのだと。
 母の兄はそれを否定した。私を一緒に入信させようとする母から私を引き離した。
 母は私を諦めて家を出て、その修行場に行ったきりまだ帰ってこない。私のことなんてもう忘れたかもしれない。

 三年生になって初めての席替えで、席が近くなった私とトモとユッコは、始めは何でもない、よくある小学生のグループだった。でも私が、冗談まじりにぽろりと言った「うちのお母さん馬鹿なの」という言葉にユッコは鋭く反応した。
「うちのお母さんも馬鹿なの」
 トモは同調した。「お母さんってきっと皆馬鹿なんだよ」
「違うよ」私は言った。私は大人の会話から、自分の母が周りとは違うと知っていた。
「普通のお母さんはやさしいんだよ。でもうちのお母さんは馬鹿なんだよ」
 本気で言っていた。
 ユッコもトモも、本気の顔で、頬を赤くして興奮した面持ちで、うん、と鼻息荒く頷いていた。

 ユッコが布団を戻した。また埃。
「センセー、すっげ、やさしかった。あたしのお母さんっておかしいの、ってゆうと、でも由子はおかしくないだろ。って言って、胸揉んでくれた。こうやって。由子のおっぱいは綺麗だなぁって言って」
 大事そうに、自分で胸を揉んだ。
 でもどうせ有馬先生はユッコを一回抱いただけなんだ。あんな卑怯な生き物は。
 ユッコは私がいることを忘れているかのように体の感覚にしがみつき始めた。
 ユッコのお母さんは、ユッコに触ったことがないという。
「だからあたし、『愛されない子』なんだって」と、ユッコは大人の言葉を借りて言っていた。「あたしたちって救われない子なのかな」
 宗教にはまった母の所為で「救い」という単語がアタマにインプットされていた私は、呟いた。
 私たちは、お互いの傷口を慰めあうように語らっていた。トモはーー何も言わずに聞いていた。
「ユッコ」
 ユッコはまだ体をなぶっていた。多分有馬先生を反芻していた。今までもこうして?ユッコ。
「ユッコ、トモは、何だったんだろう」
 うぅん、と溜息ともつかない声をユッコは漏らした。私は、戸惑って、でも、ユッコならこの光景はさほど不思議でもない。と、納得もしていた。
「トモは、なんで、私たちのそばにいたんだろう」
 私とユッコには、母親に対する憎悪という共通点があった。でもトモは、何も語らなかった。ただ私たちの言うことを聞き、私たちが許せないと言うものに同調して許せないと言っていた。
 ユッコは、まだ手を止めない。でも、そこに有馬先生の影はなかった。機械的な、肩こりをいたわるような動作にも見えた。
「ミカは、いつやったの」
「ユッコ。私そんなこと聞いてない」
「あたしがミカに聞いてる」
 私は答えなかった。
 ユッコの、手が止まった。
「……そんなこと考えたこともなかった」

 救われない子を救ってくれる神様がいればいいのよ。提案したのは私だった。母の影響は少なからずあった。ユッコもトモも賛同した。
 私たちは救われたがっていた。
 いればいいのよ。は、いつか、絶対いるんだわ。に変わっていた。

「風が吹くと花が咲くんだっけ」
 ユッコは思い出していた。盟約には書いていない、世界を。
「そう。夜になるとしおれるの」
「でもそれだと花が可哀相だから、また朝になると風が吹いて、花が咲くんだ」
 ユッコは乾いた声で笑った。「馬鹿だな、あたしら」
 便箋には盟約と、絵がかかれていた。絵を描いたのは、一番上手だったトモ。トモはあんまり何も言わなかったのに、上手に神様の絵を描いた。
 神様は、ネズミのような恰好をしていた。ネズミは小さくて嫌われ者だけど、知恵が働いて賢いから。私たちのような「救われない子」を救うには、ネズミが良かった。
 本当は私たちは、その「神様」の住む世界の住人なのだった。色々事情があって、この世に来たのだ。その事情を考える時間が楽しかった。私は、その事情をあるときは「向こうでいたずらをしてしまったから来たのだ」と言い、あるときは「お母さんを殺すために来たのだ」と言い、あるときは「こっちで遊びたくなったから来たのだ」と言っていた。ユッコは「お母さんを殺すためにここに来た」と、ずっと言っていた。その目的はいまだ果たされていないようだが。トモも、私と同じように理由をコロコロ変えた。
 色々な理由を作って、この世で受難せねばならないことを自分に言い聞かせた。そして「いつか、神様のいる世界に行こうね」と誓い合っていた。
 小学校五年生で、再び同じクラスになったとき。ユッコが言い出した。
「覚えてる?」
 忘れないようにしよう、と私が言った。
 大人になれば、こどもの頃の気持ちは忘れてしまう—そんな文句をどこかで聞いたことがあった。
 トモは頷いた。
 少女漫画雑誌の付録の便箋を私が持ってきて、ユッコが色ペンで書いた。トモが読み上げた。
 この部屋で。

「私たちは、救われない子どもです。
とてもかわいそうな子どもです。
だけどそれは本当ではなくて、
本当は☆●※◇という世界から来た、
選ばれし民なのです!

私たちは、今は修行ですが、いつか
☆●※◇に戻ります。
それまでに、私たちはこの不こうを
のりこえているでしょう。
そして私たちは、神さまになるのです。

神さま、まっていてね

トモ ユッコ ミカ」

私もユッコも、大満足だった。
自分は実は不幸な娘ではなく、選ばれし民なのだ。と、思うこと。それだけで。

「向こうに行ったっての?」
 疑わしいものを見るように、ユッコは私に言った。
「ユッコだって、向こうに行くための儀式、覚えてるでしょ…」
 ユッコがすくっと立ち上がり、湯のみを、ガチャン、ガチャンと、窓から捨てた。
 最後にお盆を捨てた。
 その音に耐えられなくなったのか、ユッコのお母さんの「ユウちゃん?」と不安げな声が聞こえた。それと殆ど同じくらいでユッコは「黙れっ、て、言ってんだろぉー!」とがなった。「殺すぞ!」とも。

 また静寂が、来た。

「ったく、あの女は…」

 ユッコ。あなたはお母さんを殺さない。
 私には確信があった。
 私もお母さんを殺さない。
 だって、私もユッコも、何度も空想でお母さんを殺しているから。

「向こう」には、簡単には帰ることが出来なかった。だってこの世界での受難は私たちに課せられた使命だったから!

「でも、一つだけ、向こうに行く方法があったよね?ユッコ」
 提案者はあなたよ。
「一番許せない人を、殺すこと」

 同時に声に出していた。

「だったら、余計おかしいでしょ。トモは、自殺したんだよ。人殺ししたわけじゃない」
 その通りだ。
「誰か殺したことを罪に感じてとか?あるわけないでしょ」
 その通りだ。でも「わかるでしょう?ユッコだって」
 私もユッコも母親を憎んでいた。殺したいと思っていた。でも
「本当に憎いのは自分よね?」

 母の兄は言った。私たちのあどけない遊びを悟って。
「ミカちゃん、きみのお母さんはたしかに酷い奴だが、殺したいと思ってはいけない」
 道徳の時間、お父さんお母さんは大切にしましょう、いつもお世話になっていますねありがとうございますといいましょうと教えられた。遠足です、動物園です、お猿の親子がおんぶしてますね、みなさんもああいうふうに仲良しですね、え?仲良しではない?そんなはずはないでしょう。あるとすればそれはあなたが毎日いい子にしていないからですよ。あっちにいるのはカンガルーです、おなかに子供を抱いて可愛がっていますね、え?カンガルーがうらやましい?そんなことはありません、あなたのお母さんもお父さんもみんなあなたを愛していますよ、愛していないとすればそれはあなたがいい子にしていないからですよ。いい子にしていないからですよ。

 ユッコは、胸をまた揉んだ。有馬先生を反芻した。
「センセー…あたしのおっぱいが綺麗だって言った…」
 この子の神様はネズミのように小汚い心を持ったオスだった。
 40過ぎた有馬にとって、15の少女は魅力的だったろう。たった一度抱けるだけで彼は満足だったろう。それ以上を求める勇気はなかったろう。でもユッコは。有馬先生を求めていた。彼女を「綺麗だ」と認めた。彼女のお母さんを「おかしい」と言った有馬先生を。
 あのネズミは、きっとその場の流れだけでそれを言ったのだろうけど。

 私たちがいつも恨んでいたのは、母を愛せない自分自身だった。
 こんな私がいなくなって、別の私になればいいと思っていた。
 そうすればきっと母に愛されて。

「19日、自殺しているのが発見された山口友江さんは、」
 六時のニュースが続報を伝えた。
 たわいない内容だった。職場で彼女は苛めにあっていた とか 両親は別居中 とか そんなたわいのない。
「トモ…楽しそうだったよね」
 ユッコが、有馬先生を反芻しながら呟いた。
 私たちが、「向こうの世界」を考えている時。何も言わなかったけれど、トモは、楽しそうだった。
 楽しそうに、「向こう」の絵を描いた。
 トモは「向こう」に行きたがっていた。
 辛かったから「向こう」に行ったのか?
 …違う気がする。あくまでも「気がする」だけだけど。
「トモ…死んだね」
 ポツリと、ユッコが、言った。

 ドアノブに巻いた紐をほどきながら「ミカ今何やってんの?」と今更ながら聞いた。
 聞かれたくなかったような気もしたけど、どうでもいい気もした。
「不倫」
 ユッコは一瞬時間を止め、
「お母さんのお兄さん?」
と、「確認」した。
「嘘。大学生」
 私の神様も、小汚い動物だ。
 玄関のそばにある和室の襖の隙間から、ユッコのお母さんが見えた。
 息を殺していた。
 ユッコが「黙れ」と言えば黙る。ユッコが「出て行け」と言えば出て行く。
 だけど、ユッコは彼女を殺さない。
 そしてユッコは死なない。
 ギリギリの状態で冷戦を保つ。
 きっといつまでも。
 新しい歴史が新しい冷戦を始めても。
 私もきっと、死なない。
 母を殺さない。
 殺そうにも母はどこにいるのかわからない。ひょっとして、どこかで死んでいるのかもしれない。何とかの教理に従って何かやらかして。
 もしもそうだとしたら、私は少し悔しいのかもしれない。

 トモは、もう「向こう」で神様になっただろうか。